ワンオーナーの中古車の意味とメリット・デメリット

プライスボード
モータージャーナリスト 金子

中古車のプライスボードを見てみると、「ワンオーナー車」と書かれていることがあります。

ネットで中古車検索してみても、ワンオーナーであることが良いことであるかのように、キャッチコピーとして書かれていることがあります。

ワンオーナーとは文字通り、その中古車を所有したのが1人だけという意味で、複数人に渡っていないので信用性が高いとされています。

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もっと詳しく言うと、所有した1人が個人である場合に限ります。事業用やレンタカー用で登録されていた車は、例え1回の登録であってもワンオーナー車にはなりません!

そのため酷使された車が少なく、中古車の買い取り価格も高めになりますし、販売価格も少し高めにしても売れるのです。

しかしワンオーナー車って本当にいいのでしょうか?

中古車のワンオーナー車のメリット

ワンオーナー車のメリットとして考えられるのは、以下のようなことです。

  • 中古車として初めて市場に出た車である
  • 前の所有者が新車を購入できる経済力がある人である
  • 新車の保証書や整備記録がきちんと揃っていることが多い
  • きちんとメンテナンスがされているケースが多い
  • 複数人の手に渡っていないので、年式が新しい車が多い

ワンオーナー車はこれまで個人が1度しか所有していない車ですので、中古車市場に初めてでた車です。

ということは、ワンオーナー車の前の所有者は、新車でその車を購入したことになりますから、経済的に余裕のある人であった可能性が高いのです。

要はお金があるのです。お金がありますので、基本的には購入したディーラーでそのまま定期点検整備をしていることが多いですし、保証書や整備記録もしっかりと保管している可能性が高いです。

また何度も中古車市場に出され複数人に渡っていないので、比較的年式が新しい車が多く、程度の良い中古車が多いのです。

でもワンオーナーって、本当に信用して良いのでしょうか?

ワンオーナーの真実!安心・安全は嘘?

ワンオーナー車と書かれている中古車を見ると、「おっ?」と思いますが、実は購入者がワンオーナーであることを調べる術はありません!(^^;)

一昔前であれば前の所有者の車検証や点検整備記録簿を見せてもらえたのですが、現在では個人情報保護の関係から、基本的には見せてもらえないことになっています。

見せてもらえる場合でも、前の所有者の氏名や住所の部分を切り取った状態のものを見せてもらうことになりますので、実際は、車の保証書の名義と車の所有者が一致しているのか確認する術はないのです!

ですので、販売店側が保証書と車検証、整備記録簿などの名義を確認し、一致していればワンオーナー車として認定するわけです。

これって、なんだか怪しくないですか?(^^;)

私たち購入者は確認できないですが、店側が確認しているからワンオーナー車ですよ?私はどうしても怪しいと思ってしまいます...。自分の目で確認しなければ納得できません!

つまりワンオーナー車っていうのは、現在では言ったもん勝ち、自己申告の世界になっているのです!

以上のことをまとめますと、ワンオーナー車とは、

"優良車である可能性は高いが、100%信用することはできない!"

ということが言えます。

こんな風にまとめましたが、 ガリバー のような優良店であればまず心配することはありませんが、明らかに古いのにワンオーナー車であったり、規模の小さな中古車屋さんのワンオーナー車は警戒した方がよいでしょう!

ワンオーナー表記は古い風習の名残?

中古車販売店でワンオーナーとして売られている車種のメリットは、出処がはっきりしているという保証の面だけです。

現在、プライスボードにワンオーナー車と表記してあるほとんどは、販売も兼ねている車買取業者が直接ユーザーから買い取ったか、もしくはオートオークションでワンオーナー専用のブロックから買い付けた車種です。

つまり他の中古車販売店を経由していないので、車の信頼度が高いという意味です。

現在ほど中古車流通の規制が厳しくなる以前、中古車がリセールされて販売店を経由すると、中には事故車扱いとなるフレーム損傷を修理してそのまま販売したり、過走行車のメーターを改ざんして店頭に並べたりする業者がいました。

これらの不正取引を防止するために、事故車は「修復歴あり」の表記が必要になり、オドメーターをデジタル表記にして改ざんを厳しく取り締まる、という規制が設けられました。

ワンオーナー車であれば他の中古車販売店を経由していないので、前述したような不正取引のための行為がないという証だったことから、現在もその風習が引き継がれているといえます。

スポーツカーやSUVはワンオーナー車の方が無難!

スポーツカーの中古車

中古車に対する不正取引の取り締まりが厳しくなっているので、一般的な販売店であればワンオーナー車の不当表示は行っていないのが現状です。

しかし3年落ちの中古車であればほとんどが、また5年落ちの車種でもワンオーナーの可能性が高いので、走行距離の短い車種に関してはワンオーナー車と表記されていることの優位性はありません。

中古車を購入する際にワンオーナー車を基準に選びたいのは、趣味性の高いスポーツカーとSUVです。

どちらも乗ってみたいという欲求を刺激する車種ですが、購入者の中には最初から短距離だけ走行して欲求を満足させ、すぐに再販することを目的で購入する人がいます。

この傾向は中古車にも見られるので、両車ともに多くの人の手に渡って、再び中古車市場に出ている車種も珍しくありません。

最初から再販を目的で購入しているので、車に対する愛着が薄く、しかも走行性能の限界値まで達するような運転をしている可能性もあり、年式や走行距離の割に故障発生率が高い場合があるので、スポーツカーやSUVなど趣味性の高い車種を中古車で購入する場合、ワンオーナー車の方が無難です。

中古車販売店の店頭に並べられる際には、外装の修理やエンジン回りの整備が行われますが、フレームの微妙な歪みまでは直すことができません。実際に試乗して走行にクセのないことを必ず確認してください。

ワンオーナーと書いている中古車の意味

ワンオーナー車でも過度な期待は禁物!

ワンオーナー車は所有者が単一であったことを意味しており、とくに表記義務はありません。つまり販売店側が自主的に表記しているのです。ワンオーナーといっても前所有者が必ず対象車両を大切に扱っていたとは限りません。荒っぽい乗り方をしてメンテナンスもせず、1回目の車検前に下取りへ出したり買取業者へ売却したりするオーナーもいます。

また前所有者が女性だったことを強調するワンオーナー車もあります。確かに室内は清潔、外観にもキズがなく手入れされていることが分かっても、あまりに丁寧に乗りすぎてエンジンのフケが悪いというケースは珍しくありません。

したがってワンオーナーだからといって過度な期待は禁物です。ただし、状態の良し悪しはともかくとしてワンオーナー車には安心感があります。

ワンオーナー車が与えてくれる安心感とは?

中古車を購入する時、対象車両の物的な状態と同時に気になるのは前所有者がどのような理由で手放したのか、という点です。走行距離が短く年式が浅いのにオーナーが何度も変わって中古車市場に出される車種は、たとえ状態が良くても「何か問題点があるのでは?」と懸念が湧きます。

しかしワンオーナーで1回目や2回目の車検前、または走行距離が3万kmや5万kmに達する前といった状況であれば、手放した理由も推測できます。前所有者が手放した理由は購入希望者に分かる由もありませんが、ワンオーナー車は推測しやすいので心理的な安心を与えてくれるのはメリットのひとつといえます。

本当にワンオーナーか確認する方法

ワンオーナーの確認

購入希望の車種がワンオーナー車と記載されていた場合、それを知る術は一般消費者にありません。しかし販売店によってはワンオーナーであることを証明する書類を用意することができます。

したがってワンオーナーであることを確認したいのであれば、販売店に証明を請求してください。販売店によっては面倒で出さないというところもありますが、そういった店舗はアフターサービスも悪く信頼性が低いので避けた方が無難です。

販売店がワンオーナーと証明できる書類は「登録事項証明書」です。これは陸運局に登録されている車の所有者の履歴を記載したものです。陸運局へ行けば販売店でなくても申請できますが、申請には自動車登録番号(ナンバープレートに記載されている数字)と車台番号(車両に刻印されている番号)、さらに具体的な請求事由が必要なので、販売店側から情報を開示してもらわなければ確認できません。

登録事項証明書には販売したディーラー名や所有した個人名が記載されているので、個人名を塗りつぶし状態でも構わないから見せて欲しいといえば、対応する販売店もあるはずです。ただし、発行には1部1000円の実費に加えて手数料が発生することを想定しておいてください。

ワンオーナーの中古車のデメリット

販売価格が通常より高い!

販売店によってはワンオーナー車というだけで、同年式同走行距離の同じコンディションの複数オーナー車よりも本体価格を高く設定するところがあります。確かにワンオーナー車は履歴の安心感はあるものの、その精神的な利益を求める人だけの価値で、物理的な条件で購入したい人にはあまりメリットがありません。

しかし、販売店がワンオーナー車に付加価値をつけて高く販売していたら逆に値引き幅を高くする交渉が可能です。とくに人気車種でなければワンオーナー車だからといって即売できるとは限らず、在庫として残ることもあります。

したがって同車種からほぼ同年式同走行距離を選び、相場として高いことを提示すれば販売価格を相場並に下げてくることが期待できます。ワンオーナー車でも特出したコンディションではない限り、値引き交渉することをおすすめします。

カスタマイズ車が多い!

ワンオーナー車の中で意外に多いのが前所有者のカスマイズをそのままの状態で販売しているケースです。販売店側としてはワンオーナーを強調するためにエアロパーツやアルミホイールなどを装着したままの状態にしており、さらにパーツ代を上乗せしているので販売価格も高くなっています。これではせっかく状態の良い車種であっても個性が強すぎて購入を諦めなければならない人もいるはずです。

カスタマイズをノーマルに戻すには費用がかかり、場合によってはボディや内装を汚してしまう可能性があることも装着したまま販売している理由のひとつです。もっとも、カスタマイズが好みであった場合はむしろ好都合となります。カスタマイズのパーツ代や工賃を考えると装着済の方がトータル的に安くなるからです。

とはいえ、やはりカスタマイズされているワンオーナー車は専門店でない限りデメリットのなるので、購入する際は値引き交渉の材料にできます。取り外し工賃ぐらいは最低限、ゲットしてください。

ワンオーナーの中古車を選ぶ際の注意点

ワンオーナーだから状態が良いという先入観を持たない

ワンオーナー車だから状態が良いとは限りません。走行距離が短く、前所有者が几帳面でメンテナンスもディーラーに任せるようなタイプであれば新車に近いような状態を保っていますが、そういった車種は販売価格が確実に高くなります。

一方、前所有者が車を頻繁に買い換えるタイプでメンテナンスも満足に行わず、1回目や2回目の車検前、つまり故障が発生しやすい状態の前に売却や下取りに出してしまうようであればコンディションは良い状態とは言えません。

したがってワンオーナー車であっても定期点検整備記録簿のチェックをおすすめします。新車は各メーカーによって若干の違いはあるものの、1ヶ月点検、6ヶ月点検のサービスがあり、その後、法定12ヶ月と24ヶ月の点検があります。

これら点検の結果を記載しているのが定期点検記録簿です。ただし、これを記載するのに資格は必要としておらず、極端な話、個人でも構わないのです。

定期点検整備記録簿の記載者は最低限、法人名義であれば標準以上の状態が望めます。ワンオーナー車であるからといって先入観を持たず、年式や走行距離に見合ったチェックを行ってください。

走行距離が伸びているワンオーナー車はクセに注意する

車は単一の所有者が長く乗っていると運転の仕方がコンディションに表れます。これを一般的に「クセ」と呼んでいます。走行距離1〜3万km程度では「クセ」が出ることはあまりありませんが、5万km前後になると「クセ」を持つ可能性が出てきます。

丁寧に乗っていてもエンジンをある程度の回転まで回していないと吹け上がりが悪くなっていることがあれば、MT車ではクラッチのつなぎ方が悪かったことで減りが早くなっていることもあります。また極端な話、左コーナーが苦手で左コーナーになると強くブレーキを踏む「クセ」を持っていたらブレーキが片減りしていることもあります。

ワンオーナー車の「クセ」は試乗してみなければ分かりません。車検残のある対象車両であれば試乗もできますが、車検取得が条件では一般公道を走ることができません。

それでもエンジンをかけ、アクセルを踏めば吹け上がり状態を確認できますし、店舗内を少し走ってブレーキを強く踏めば「クセ」の一部は分かります。ワンオーナー車で状態が良くても、必ず実働させてフィーリングチェックすることをおすすめします。

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